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土地の「揺れやすさ」の調べ方|表層地盤増幅率とJ-SHISの見方

2026-09-06 公開 ・ 執筆: uuta_map

浸水や土砂災害のハザードマップは、住まい探しの場面でもかなり知られるようになりました。一方で「同じ地震が来ても、場所によって揺れの強さが違う」という話は、あまり表に出てきません。ここでは、その差を扱っている公開情報——防災科学技術研究所(NIED)が運営する地震ハザードステーション「J-SHIS」と、そこで公開されている表層地盤増幅率——が何を示しているのかを整理します。

※この記事は公開情報の紹介であり、特定の土地の評価や、購入・建築の可否についての助言ではありません。

論点1:「揺れやすさ」を数字にしたものが表層地盤増幅率

J-SHISは、表層地盤増幅率を「工学的基盤(S波速度Vs=400m/sの層)から地表に至る際の地震波(最大速度)の増幅度」と定義しています。硬い岩盤の上まで届いた揺れが、その上に載っている柔らかい地層を通り抜けるときにどれだけ増幅されるか、という比率です。

この値は、地表から30mまでの平均S波速度(AVS30)から評価されています。「その地点の地下の硬さ・柔らかさ」を一つの数字に置き換えたものであり、建物の強さや地震の起こりやすさとは別の指標だ、と捉えられます。

論点2:J-SHISで何が公開されているのか

J-SHISは2005年5月に運用が始まった無料のWebサイトで、次の情報が一元的に管理・公開されています。

住所や地図から地点を指定すると、その地点の表層地盤増幅率や、後述する30年確率を画面上で読み取れます。登録は不要です。

論点3:メッシュは約250m四方——「敷地の値」ではない

J-SHISのメッシュは約250m四方です。これは総務省の標準地域メッシュ(1km四方)を四等分した1/4地域メッシュにあたります。元データは、若松加寿江・松岡昌志らによる「地形・地盤分類250mメッシュマップ」です。

250m四方の中には、通常は複数の街区が入ります。したがって表示される増幅率は「この敷地の値」ではなく「このあたりの平均的な傾向」を表す数字だ、という読み方になります。同じメッシュの中でも、盛土か切土か、造成の履歴がどうかによって条件は変わり得ます。

論点4:増幅率の「閾値」は公的には示されていない

ここが、浸水深のハザードマップと最も違うところです。浸水系の地図には凡例に深さの目安が書かれていますが、増幅率には「◯以上は揺れやすい」といった公的な数値の基準は示されていません

J-SHISの公式FAQも、増幅率1.2の地点と2.4の地点を比較する形で説明しており、絶対的な合否ラインを引くのではなく、地点どうしを相対的に比べる例示にとどまっています。

増幅率は、周辺と比べて相対的に見る数字として公開されている。

そのため実務的には、候補地の値を単独で眺めるのではなく、同じ市内の複数地点を並べて「周りと比べて高いのか低いのか」を見る、という使い方をしている例もあります。

論点5:30年確率は「別の指標」で、基準日がある

J-SHISで増幅率と並んで目にするのが、確率論的地震動予測地図の代表指標である30年確率です。これは、その地点が今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を示します。地盤の硬さ(増幅率)とは違い、震源側の要因も含んだ数字です。

注意点として、この地図には基準日があります。現行の公式最新版である「全国地震動予測地図2020年版」の基準日は2020年1月1日で、2021年3月26日に公表されました。また、J-SHIS上には2024年1月基準の予測地図も掲載されていますが、これはNIEDが独自に公開したもので、地震調査研究推進本部による正式な「全国版」の更新ではない、と説明されています。どの版を見ているのかで数字が変わり得る、という前提で読むことになります。

論点6:地形分類とつなぐと「なぜその値なのか」が見える

増幅率が高い/低い理由そのものは、J-SHISの画面には書かれていません。その手がかりの一つが土地の成り立ちです。国土地理院の地形分類は、地理院地図の「土地の成り立ち・土地利用」→「地形分類(自然地形/人工地形)」レイヤーで閲覧できます。

ただし、国土地理院のページが地震関連リスクとして明記しているのは、液状化(盛土地・埋立地・旧河道・砂丘縁辺部など)と地盤崩壊(山麓堆積地形、盛土地・埋立地)です。「谷底低地は揺れやすい」といった、地形分類と揺れやすさを直接対比した記述は確認できませんでした。地形分類は液状化・崩壊の手がかりとして公表されているものであり、増幅率の代わりにはならない、と整理しておくのが正確です。

土地の履歴のたどり方は土地の履歴の調べ方、埋立地の見分け方は埋立地の調べ方で扱っています。浸水・土砂の想定についてはハザードマップの見方を参照できます。

論点7:自治体の「揺れやすさマップ」という別の系統

揺れやすさは、自治体が独自に公表している場合もあります。地震防災対策特別措置法第14条は、都道府県(1項)および市町村(2項)に対し、地震動の大きさ等を記載した印刷物の配布などにより住民へ周知するよう努める、という努力義務を定めています。J-SHISが全国一律の250mメッシュであるのに対し、自治体版はより細かいメッシュや独自の想定地震で作られていることがあります。

論点8:揺れやすさは、重要事項説明の列挙項目に入っていない

不動産取引の重要事項説明で、区域内にある旨の説明が義務づけられているのは、宅建業法35条1項14号および同法施行規則16条の4の3に列挙された事項です。災害関係では次のものが含まれます。

区分説明義務の対象
造成宅地防災区域区域内にある旨
土砂災害警戒区域区域内にある旨
津波災害警戒区域区域内にある旨
水害ハザードマップ水防法に基づき市町村が作成した図面における物件所在地(令和2年8月28日施行)

一方、「地盤の揺れやすさ」や「表層地盤増幅率」は、この列挙されている項目には含まれていません。説明されないから問題がない、という意味ではなく、制度上そこを聞く仕組みになっていないので、知りたければ自分で公開情報を見に行く領域だ、という位置づけになります。

論点9:建物側の基準は「地盤」とは別の軸で決まっている

揺れやすさが地盤の話であるのに対し、建物側には別の基準があります。

なお、建築基準法施行令88条に基づく昭和55年建設省告示1793号は、地盤の卓越周期によって第一種・第二種・第三種地盤を区分しています。設計の世界では地盤の性質が織り込まれている一方、その区分はJ-SHISの増幅率とは別体系の指標です。

論点10:地震保険の料率には、敷地ごとの揺れやすさは反映されない

地震保険の基準料率は、都道府県別の区分と建物構造(イ構造・ロ構造)で決まります。敷地個別の地盤の揺れやすさは料率に反映されません。「保険料が同じ=揺れ方も同じ」ではない、という点は、増幅率を見る動機の一つとして挙げられることがあります。

数字でわかること、わからないこと

J-SHISの増幅率と30年確率からわかるのは、約250mメッシュ単位での相対的な傾向と、公表時点の基準日における確率です。敷地単位の地盤の状態、造成の履歴、建物の構造や基礎の仕様までは、この地図からは読み取れません。実際の判断にあたっては、地盤調査の結果や設計内容といった、物件ごとの資料が別に存在します。

なお、J-SHISのデータは利用規約第4条により、出典を明示すれば転載・引用が可能です(表層地盤データは規約所定の参考文献引用が必要)。

出典・参考

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※ 本記事は一般的な考え方の紹介であり、個別の物件の購入を推奨・非推奨するものではありません。制度・税制は変わることがあり、適用要件はご自身で最新の一次情報をご確認ください。購入の判断はご自身の責任でお願いします。