セブンのドミナント戦略は本当に「集中出店」か|4都市のコンビニ分布を調べた
セブン-イレブンは高密度多店舗出店(ドミナント戦略)を掲げています。実際に他のチェーンより固まって並んでいるのかを、さいたま・名古屋・札幌・横浜のコンビニの位置データで調べました。セブンがいちばん集中している側に入った都市は、一つもありませんでした。
街を歩いていると、「さっきもセブンがあったのに、またセブンだ」と思うことがあります。店の数がいちばん多いチェーンなので、よく見かけるのは当たり前といえば当たり前です。
ただ、セブン-イレブンは出店の方針としてドミナント戦略を掲げています。「高密度多店舗出店」とも呼ばれ、決めた地域に店を集中して出していく考え方です。同じ地域に店がまとまっていると、名前を覚えてもらいやすく、配送や本部の支援も効率よく回せる、というのがその理由とされています。
そうなると気になるのは、セブンの店は他のチェーンより本当に固まって並んでいるのか、という点です。この記事では、オープンストリートマップに登録されているコンビニの位置を使って、さいたま・名古屋・札幌・横浜の4都市で実際に調べてみました。
まず、店の数を確認する
国内の店舗数は、2026年春の時点でセブン-イレブンが約2万2千店、ファミリーマートが約1万6千店、ローソンが約1万5千店です(各社公表値)。2位とは6千店ほどの差があります。
これだけ多ければ、どの街でも目に入るのは不思議ではありません。けれども、店の数が多いことと、店どうしが近くに固まっていることは別の話です。数が多くても、まんべんなく散らばっていることはあり得ます。固まっているかどうかは、位置のデータがあれば数字で確かめられます。
調べ方① 最近傍指数
使ったのは、空間統計でよく使われる最近傍指数という指標です。
まず、あるチェーンの店ごとに「いちばん近い同じチェーンの店までの距離」を調べ、その平均を出します。次に、同じ広さの範囲に同じ数の店をでたらめに置いた場合、その距離が平均でどのくらいになるかを計算します。実際の平均を、でたらめに置いた場合の平均で割ったものが最近傍指数です。
- 1より小さい:でたらめに置くより店どうしが近い(集中している)
- 1に近い:でたらめに置いた場合と区別がつかない
- 1より大きい:でたらめに置くより店どうしが離れている(均等に散っている)
セブンが店を固めて出しているなら、この値は1をはっきり下回るはずです。
調べ方② 隣の店は同じチェーンか
もう一つ、同ブランド最近傍率も見ました。それぞれの店について、いちばん近いコンビニが自分と同じチェーンかどうかを数え、その割合を出したものです。店を固めて出しているなら、「セブンの隣はセブン」になる割合が高くなると考えられます。
ただし、この割合はシェアの影響を受けます。店の数が多いチェーンほど、特に何もしなくても隣が同じチェーンになりやすいからです。この点は後半で補正します。
4都市で調べた結果
各都市の中心部を、緯度と経度で四角く区切って調べました。分布図は、その範囲にあるコンビニの位置を点で打ったものです。道路や海岸線は描いていないので、地図というより、店の位置だけを写した図です。

最初に調べたのは、さいたま市の中心部です。この範囲で拾えたコンビニは723店ありました。内訳はセブンが約46%、ファミリーマートが約26%、ローソンが約21%で、ほぼ半分がセブンです。
分布図ではセブンを赤で塗っています。赤い点が全体に広がっていて、これだけ見るとセブンが密集しているように感じます。
ところが、セブンの最近傍指数は1.09でした。1を下回るどころか、少し上回っています。でたらめに置いた場合より、店どうしがわずかに離れているということです。
同ブランド最近傍率も確認しました。セブンの店のうち、いちばん近いコンビニもセブンだったのは約28%です。シェアが46%あるので、偏りがなければ4割を超えていてもおかしくありません。実際の値はそれよりかなり低くなりました。

さいたまだけの結果では、たまたまという可能性が残ります。そこで、名古屋・札幌・横浜でも同じ手順で計算しました。
セブンの最近傍指数は、さいたまが1.09、名古屋がほぼ1.00、札幌が1.04、横浜が0.84でした。値は都市によって違いますが、それぞれの都市で他のチェーンと並べてみると、セブンがいちばん集中している側に入った都市は一つもありませんでした。

名古屋の中心部では513店を拾えました。ここではセブンは2番手で、いちばん多いのはファミリーマートです。
愛知県はもともとサークルKとサンクスの地盤でした。経営統合でその店舗網がファミリーマートに引き継がれたので、分布図でファミリーマートが目立つのはその影響だと考えられます。

札幌では、北海道が地盤のセイコーマートが2割を超えています。北海道内の店舗数ではセイコーマートがセブンを上回っていて、全国の順位がそのまま当てはまらない街です。
それでも、セブンの最近傍指数は1.04で、さいたまと同じく1を少し上回りました。

横浜では、セブン・ファミリーマート・ローソンの3社とも0.8台でした。3社そろって低いのは、調べた範囲の切り方が影響していると見ています(理由は「この分析の限界」に書きます)。チェーンごとの差はほとんどありませんでした。
シェアの影響を取り除いてみる
同ブランド最近傍率は、シェアが高いチェーンほど大きく出ます。そこで、この割合をそのチェーンのシェアで割りました。値が1を超えれば、シェアから見込まれるより同じチェーンどうしが隣り合っていることになり、1を下回れば、見込みより他社と隣り合っていることになります。
| 都市 | セブンの値(同ブランド最近傍率÷シェア) |
|---|---|
| 名古屋 | 0.69(1を超えたのは3社のうちローソンだけ) |
| 札幌 | 0.52 |
| 4都市全体 | 0.5〜0.9。1を超えた都市はなし |
名古屋のセブンは、シェアが約3割あるのに、隣もセブンだった店は約2割でした。札幌ではその差がさらに大きくなっています。数字だけを見ると、セブンは自社の店どうしが隣り合わないように置かれている、と読めます。
「近くに2軒ある」という印象がいちばん強いチェーンが、指標の上ではいちばん自社の店と隣り合っていなかったことになります。調べる前の予想とは逆の結果でした。
この分析の限界
数字の読み方に関わるので、限界も書いておきます。
- オープンストリートマップは有志が作っているデータなので、登録されていない店があります。店の総数は実際と合いません。一方で、チェーンごとの比率や分布の傾向を見るには十分使えると考えています。
- 最近傍指数は、調べる範囲の切り方で値が大きく変わります。四角い範囲に海や山が入ると、店を置けない面積まで計算に入るため、値が小さく(集中している側に)出ます。横浜で3社とも0.8台になったのは、範囲に湾岸部が入っているためだと見ています。このため、指数を都市どうしで比べることはできません。比べられるのは、同じ範囲の中でのチェーンどうしの差です。
- 調べたのは各都市の中心部だけです。郊外の幹線道路沿いでは、店の並び方も競合の状況も違ってきます。
- 今回の結果は、ドミナント戦略が存在しないことを示すものではありません。ドミナントはもともと、どの市区町村やエリアに出店し、どこには出店しないかを決める話です。店どうしの数百メートルの距離を調べた今回の検証とは、見ている広さが違います。
ここから読めること
以上を踏まえた、筆者なりの読み方を書きます。データから言い切れることではなく、一つの仮説です。
セブンの出店は、狭い範囲に店を固めるというより、出店すると決めたエリアをまんべんなく覆っていく形に見えます。エリアを選んで集中的に出すという意味ではドミナントですが、そのエリアの中では、自社の店どうしで客を取り合わないように間隔をあけているのではないでしょうか。
そう考えると、「またセブンだ」という感覚は、店が固まっているから生まれるのではなく、どこへ行っても同じくらいの間隔でセブンがあるから生まれている、と説明できます。
自分の街で確かめるなら
今回調べたのは、店と店の間隔でした。出店を考えるときのもう一つの手がかりが、その場所のまわりに何人住んでいるかです。店の間隔が同じでも、周りに住む人の数は場所によって大きく違うからです。
住所を1つ入れると、半径500m〜3kmの人口・世帯数・年齢構成を国勢調査をもとにまとめる商圏レポートがあります。登録やログインは要りません。近所のコンビニの住所と、少し離れた別の店の住所を入れると、周りの人口を見比べられます。
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- 2026年10月11日
本記事は公開データにもとづく検証の記録です。特定の場所についての評価や助言ではありません。データや制度は更新されることがあるため、実際にご利用の際は最新の一次情報をご確認ください。


