COLUMN

中古マンションの「音」を買う前にどこまで見分けられるか — 構造・床・壁から論点を整理する

2026-07-27 公開 ・ 執筆: uuta_map

中古マンションの内見は、たいてい平日の昼間に、空室の状態で行われます。人の気配のない部屋は静かで、音の問題はほとんど見えません。ところが住み始めてから、上階の足音や隣の生活音が気になり始める——という話は、実際によく聞かれます。

音は、間取りや価格と違って現地で数字として見えにくいうえ、買ってから自分で直せる範囲がとても狭い部分です。ここでは、購入前に音についてどこまで見分けられるのか、その論点を整理していきます。あくまで一つの整理の仕方として読んでいただければと思います。

論点1: まず「どこから来る音か」で分ける

音の話がややこしくなりやすいのは、性質の違う音がひとまとめに「騒音」と呼ばれるためです。伝わり方で分けると、確認する場所も変わってきます。

このうち立地に由来する「外からの音」は、内見時にもある程度つかめる部分です。一方で上下・左右の音は、建物の仕様を資料で確かめるしかない領域が多く残ります。

論点2: 法令が定めているのは「最低ライン」

共同住宅と長屋の各戸を隔てる壁(界壁)には、建築基準法30条と施行令22条の3で遮音性能の基準が定められています。具体的には、振動数125Hzで25デシベル、500Hzで40デシベル、2,000Hzで50デシベル以上の透過損失(音を減らす量)が求められています。

ここで押さえておきたいのは、これが法令上の最低ラインであって、快適さを保証する水準ではないという点です。基準を満たしていても、隣の生活パターンや壁の向こうにある部屋の用途によって、聞こえ方は変わってきます。また、この基準は隣戸との壁を対象とするもので、上下階の床衝撃音については法令上の数値基準が置かれていません。上下の音が「建物ごとの仕様次第」になりやすいのは、このためです。

論点3: 上下の音 — スラブ厚と、床構造の見え方

上下階の音は、大きく2種類に分けて語られます。

一般に、コンクリートスラブが厚いほど重量床衝撃音には有利とされ、200mm前後を一つの目安として挙げる例が多く見られます。ただしスラブは、厚さだけでなく支える梁の間隔(面積)によっても振動の仕方が変わるため、厚さの数字だけで序列がつくものでもないようです。

「二重床のほうが静か」とは限らないという点も、論点になりやすいところです。二重床はコンクリートの上に空気層をはさんで床を組む構造で、軽量床衝撃音にはクッションとして働きます。一方で、その空気層が太鼓の胴のように共鳴して低い音を増幅させる「太鼓現象」が起こることがあり、同じスラブ厚なら重量床衝撃音は直床のほうが有利になるケースも報告されています。二重床にはメンテナンス性や段差解消といった別の利点があり、遮音性能だけで優劣が決まるわけではない、という捉え方が実態に近いように思います。

### ΔL等級(旧L値)の読み方

床材のカタログには「ΔLL-4」「ΔLH-2」といった等級が載っていることがあります。これは日本建築総合試験所が2008年4月に策定した「床材の床衝撃音低減性能の等級表記指針」にもとづく表示で、それ以前の「推定L等級(LL-45など)」に代わるものです。JIS改正(2007年10月)を受けた変更で、軽量側がΔLL(1〜5)、重量側がΔLH(1〜4)の等級で示されます。

注意したいのは、ΔL等級が示すのは実験室で測った「床材そのものの低減量」であって、その部屋で実際に何デシベル聞こえるかではない、という点です。旧来のL値が「その空間の遮音性能の推定値」だったのに対し、ΔL等級は部材の性能を切り出した数字です。等級の高い床材が使われていることは手がかりの一つになりますが、それだけで住戸の静けさが決まるわけではありません。

論点4: 左右の音 — 戸境壁は「厚さ」だけでは決まらない

隣の住戸との壁は、鉄筋コンクリートで作る湿式壁と、石膏ボードとグラスウールで構成する乾式壁に分かれます。中古マンションの資料では、コンクリートの戸境壁で180mm以上を一つの目安として挙げる例がよく見られ、隣が浴室やキッチンなど水まわりに接する場合は200mm以上あると安心という見方もあります。

乾式壁は、厚さの数字だけを湿式壁と比べても意味を持ちにくい構造です。石膏ボードの枚数、間の空気層、グラスウールの充填といった構成の組み合わせで性能が決まるため、「薄い=性能が低い」とも「厚い=高い」とも言い切れません。高層階では建物重量を抑えるために乾式壁が選ばれることも多く、乾式であること自体が欠点というわけでもないようです。

間取りの合わせ方も見ておく余地があります。自分の寝室の向こうが隣家の寝室なのか、水まわりなのか、玄関なのかで、聞こえてくる音の種類と時間帯が変わります。図面で隣戸との接し方を確認しておくと、壁の仕様の話が具体的になりやすいところです。

論点5: 住宅性能評価書があれば、音は「等級」で読める

住宅性能表示制度には「音環境に関すること」という分野があり、重量床衝撃音対策・軽量床衝撃音対策・透過損失等級(界壁)・透過損失等級(外壁開口部)の4項目が設けられています。このうち透過損失等級(界壁)は等級1〜4で表示され、等級4は日本産業規格のRr-55等級相当以上の性能を指します。

ただしこの分野は「選択項目」で、評価を受けるかどうかは申請者が選べます。そのため、性能評価書があっても音環境の項目は空欄、という物件は珍しくありません。裏を返せば、音環境の等級まで表示されている物件は、売主・施工者側がその性能に一定の自信を持っていた可能性がある、という読み方もできます。

論点6: 内見でできること、できないこと

資料で分かる範囲には限りがあり、最後は現地での確認が残ります。内見の場でできることとしては、次のような点が挙げられます。

「上の階に小さな子どもがいるかどうか」を事前に知る手段がほぼない以上、音のリスクをゼロにはできません。建物の仕様で下限を確かめ、残りは確率の問題として受け入れる、という整理の仕方をしている人が多いように見えます。

立地に由来する音は、周辺環境から見えてくる

ここまで見てきたように、上下・左右の音は建物固有の仕様に左右され、外から数字で測ることが難しい領域です。一方で、幹線道路・線路・繁華街・学校といった「外からの音」の要因は、立地の情報から事前に把握しやすい部分でもあります。

ここスコアは、住所を入れると周辺の施設や交通の状況をスコアと地図で表示します。音そのものを測るツールではありませんが、大きな道路や線路との位置関係、商業施設の集まり方といった、音の発生源になりやすい要素の当たりをつける用途には使えます。立地由来の要因を先に把握しておいて、内見では建物側の音に集中する、という順番も一つの進め方かもしれません。

出典

※ 本記事は一般的な情報の整理であり、個別の物件の遮音性能を判断・保証するものではありません。基準や制度は改正されることがあるため、最新の内容は上記の一次情報でご確認いただけます。

候補の物件を、住むほうも持つほうも中立に採点してみる

住所を入れるだけで、暮らし・通勤・資産価値を100点で採点します。計算式はすべて公開。登録した情報はお使いの端末の外に出ません。

※ 本記事は一般的な考え方の紹介であり、個別の物件の購入を推奨・非推奨するものではありません。制度・税制は変わることがあり、適用要件はご自身で最新の一次情報をご確認ください。購入の判断はご自身の責任でお願いします。